天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

酔芙蓉

円覚寺の酔芙蓉

 先の日曜日の昼前、円覚寺で時間を過ごした際に見かけた酔芙蓉について、関連したことを書いておきたい。芙蓉は中国原産の葵科の落葉低木。その園芸種として酔芙蓉が出来た。花の色が朝は白、午後は淡紅、夕方から紅色に変化する。ここが名前の由来である。ただ、いつの時代にわが国に現れたのか、まだ調べていない。唐以前は蓮を指していたらしい。白居易の『長恨歌』で楊貴妃を譬えた有名な句「面は芙蓉の如く、眉は柳に似る」の芙蓉は蓮であったし、平安時代の文学にでてくる芙蓉もしかりであった。当然万葉集には出てこない。

     枝ぶりの日ごとにかはる芙蓉かな   芭蕉


 写真の酔芙蓉は昼前なので、俳諧的にはまだ般若湯が入っていない状態と見る。とまあ、平凡なことを思っているうちに、昔、鎌倉のはずれの製作所に勤務していた頃、夜に大船のカラオケ・バーで飲んだときのことを思い出した。なんと円覚寺の修行僧達の一団がいたのである。彼らはあまり酒は飲んでいるふうでなくカラオケが主目的であったらしい。我々は酔いにまかせてからかい半分に話しかけた。なかなかのってこなかったが、やっと円覚寺から来たこと、こうした場所にはたまにくることなど聞き出せた。彼らはうちにこもるように固まってひそひそと話し合っている感じであった。途中で話しかけることをやめたが、気の毒なことをしたと後で反省したものである。


     円覚寺夜にあからむ酔芙蓉