天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小田原文学館

童謡館 湘子句碑 白秋歌碑

 小田原文学館は南町二丁目にあり、西海子小路(さいかちこうじ)に面している。小田原にゆかりのある文人は多い。北村透谷、尾崎一雄北原白秋谷崎潤一郎三好達治坂口安吾、北條秀司、川田順 など十数人いる。文学館と同じ庭に白秋童謡館と移築された尾崎一雄の書斎がある。平日の訪問者はほとんどいないのでは、と危惧されるが、それぞれに受付の人がいて庭を手入れする人もいる。訪れるたびに思うのだが、こうした設備を維持するのは大変であろう。


  松のみが菰を巻かれて並び立つ楠の木混じる城郭の庭
  松籟の風もすがしき城郭に紅梅にほふあかがねの門
  小田原に住みし文人あまたあり春風わたる西海子小路
  童謡館屋根にふれたる白梅に目白きたりて花の蜜吸ふ
  「愛されずして沖遠く泳ぐなり」日の当たらざる庭隅の句碑
  移築せし書斎の部屋に碁盤あり黒石ひとつおきて人待つ
  日に照れる香の菓(かぐのこのみ)の黄に触れて感極まれり
  風の竹林


  あたたかき春の朝日に包まれて庭のベンチにしましまどろむ
  山茶花のちりて朽ちたる庭隅に北條秀司の大き碑はあり
  茶をすすり三好達治をしのびけり詩人旧居の諸白小路
  大き尻壁に押し当てたゆたへる象のウメコに春風が吹く


      春浅き西海子小路文学館
      大き尻壁に押し当て象の春
      春風や雉も孔雀も居眠れる
      ひさかたの春日まぶしき象舎かな