天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

著莪の花

一夜城跡の著莪の花

 しだれ桜を見た後、入生田から石垣山の一夜城跡に登った。太閤の一夜城として有名だが、実際は、約四万人が動員され天正十八年四月初から六月下旬まで八十日間を費やしたという。
山桜が数本咲いていたが、沿道の染井桜はまだまだである。それよりもそこここに既に夏の花である著莪が咲いているのには驚いた。アヤメ科の常緑多年草で中国渡来のものが野生化したという。桜と違って派手さはないが、清楚でなかなか風情がある。一夜城跡は、隠れた著莪の花の名所なのだ。


      石垣を多段につくる蜜柑山
      スダジイの青葉ざはめく城の跡
      石垣は穴太(あのう)の野積み著莪の花


  江戸城に石切り出しし山峡に矢穴うがてる石残りたり
  あの海の海岸線に押し寄せし長宗我部、九鬼、毛利の水軍
  迫り来る二十二万の軍勢に篭城むなし六万の兵
  若くして陣に逝きにし秀政の墓と伝ふる宝筺印塔