天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

海ゆかば

 「俺は、君のためにこそ死ににいく」のロードショーを茅ヶ崎に見に行った。結論の感想を先に言ってしまうと、あまりに子供じみてリアリティに欠ける。米艦船と特攻機の攻防も、いまいちだが、なにせ人間関係の表現に迫真性がない。阿波踊りを踊ってみせるところは、胸にぐっとくるものはあったが、蛍が飛ぶ場面の映像は頂けない。唯一圧倒的に迫力があったのは、大伴家持言立・信時潔作曲の歌「海ゆかば」であった。これを劇場の立体サウンドで流されると、戦争を体験していない身にも恐ろしくなるほどの感動を覚える。以前、小池光が「海ゆかばのすべて」を心ゆくまで愉しんだというブログを見たので、こちらもCDを取り寄せてパソコンで聞いたことがある。正直その時は退屈で、眠たくなった。
 考えさせられたのは、靖国神社で会おう、というせりふが何度も出たことである。確かに重い言葉であった。特攻兵士に限らず、当時の兵隊達の心のよりどころとして靖国神社があった。
 あまり言いたくはないが、製作総指揮・脚本を担当した石原慎太郎都知事に専念したほうがよい。どちらも片手間にやっているようで、どちらも中途半端になる。都知事を辞めた後、もし戦争映画を作るなら、むしろこれからの戦争を想像した作品に期待したい。