天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

潮だまり

神奈川県真鶴岬にて

 過去に何度も紹介したが、湯河原の手前に真鶴岬がある。新緑の頃になると一度は行く場所である。わずかではあるが残っている原生林に惹かれるのだ。以前と比べると観光施設が減っている。中川一政美術館は今もあるが、どれくらい訪問客があるか他人ごとながら心配。


      足音に舟虫落つる潮だまり


  日傘さし磯に坐りて操作せる女ひとりの携帯電話
  とびきたる涼しき声ににごる目をこらして見たり磯辺の巌
  引潮の潮だまりには稚魚の群人の気配に逃げ惑ふなり
  岩かげに逃げ込む稚魚の潮だまり人の気配の消しがたきかも
  石になりてわが立ちをればそろそろと岩陰を出づ渚の稚魚は
  引潮の渚の岩に腰かけて時を忘れぬ潮満ちにけり
  独りゐて岬の岩の満ち潮の音におどろくわれならなくに
  崖の上に家たてり見ゆ真鶴の石切りだせる限界知らず
  浜豌豆、浜昼顔に浜大根 みな花咲きて命ながらふ
  くろまつの森にこもれる蝉の声五月半ばの真鶴岬