蓮の花(1)
蓮の花が咲く時期になったので、鎌倉・鶴ヶ丘八幡宮に行った。源平池には蓮が一面に生い茂っている。莟あり、はや花弁が散って実を結んでいるものあり。平氏池には、白い花ばかり。源氏池にはうすくれなゐの花と白い花とが混じって咲いている。色の配合からいえば、平氏池には紅の花が、源氏池には白い花が咲くように、蓮の種を植え分けたらと思うのだが。
咲きみちて鬱ふかくせり百日紅
蓮の実のふとりて花は散るばかり
蓮の葉の揺るるは風の通り道
病葉や蓮の台(うてな)にちりきたる
蓮の実のふとりつつあるさまを見き源平池の縁をめぐりて
蓮池の水面おほへる砂ぼこりうすくれなゐの花びらがちる
飛び交ひてあっといふ間につるみたり塩辛とんぼ蓮池の空
日ごろ見る鷺の姿を今日は見ず蓮の花咲く源平池に
蓮池の水面のほこりかき分けて走りまはるは水馬なり
日盛りの若宮大路をとびゆけり若き女の曳く人力車
蓮池の花の散りぎは見てゐたり蜜蜂がきて蜻蛉がとんで
つぎつぎに蓮の葉むれの揺れにけり谷戸吹き抜くる風の通り路
風もなく蓮の揺るるは池に棲む鯉か草魚が藻を食める時