天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

枇杷の実

開成町にて

 枇杷の木はバラ科の常緑果樹。秋から冬にかけて白い芳香のある花が開く。実は5月から7月に収穫する。中国から渡来したとされてきたが、日本の南部には野生していたらしい。実は生で食べたり缶詰にされる。


     枇杷買ひて夜の深さに枇杷匂ふ    中村汀女
     やはらかな紙につつまれ枇杷のあり  篠原 梵
     口中にふくらむばかり枇杷の種    右城暮石


  素直なる結実ありてさし交わす枇杷の梢は合掌の形
                      山田あき
  枇杷の実はちいさいながら百あまり黄に充ちてあり
  あなどりがたし             坪野哲久


  月光のあまき地の上かたはらに人ゐるやうに枇杷の実れる
                      辺見じゅん
  いずれとも交差するなき透明な枇杷の時間がかたわらに逝く
                      源 陽子
  枇杷ふとりゆるらにふとり金色の雨をうけつつしずかに灯る
                      小高 賢
  みじろぎもせず食卓にゐる蠅は枇杷のたねくらゐにも
  大きくなれり              小池 光


  沖に沈む夕陽のいろに染められし楕円の枇杷がひとつ浮かべり
                     川戸れい子