秋雑詠(2)
彼岸花に注目しながらあちらこちらと歩いていたが、特に面白い組合せは、東海道鉄砲宿の沿道に咲く彼岸花とその前のポストであった。また鎌倉鶴ケ丘八幡宮の大銀杏は、台風で倒れた後、切株を元の位置のすぐ近くに移植されているが、その根方に彼岸花が咲いているのにも驚いた。
土手に生え背丈のそろふ曼珠沙華
赤色をポストと競ふ曼珠沙華
底脱(そこぬけ)の井に顔映す曼珠沙華
「小吉」の御神籤むすぶ紅葉かな
校庭にこゑひびかひて来たる日の運動会の練習をする
里山の朝はカラスのこゑに来る谷をはさみて鳴き交はすなり
一番ジータ二番イチロー三番がA・ロッドといふ夢のやうなる
三振をとれば歓声湧きあがり波濤の落ちて引潮の音
色つやのともしく咲けるこの年の萩の花むらちちろ虫鳴く
日曜の催事に備へ金曜の朝より作る流鏑馬の馬場
移植せし銀杏大樹の切株の根方に赤き彼岸花咲く
相模国風土記に言へり石面を洗はば出づる鶴亀の像
あたたかき朝光(あさかげ)射せる池の辺の地に腹這ひて
目つむる鳩は
破れ蓮をさらひて清し朝光をあそばせてゐる源平の池
段葛つつじの青き植込に赤く咲きたる彼岸花の群
長野駅ホームを歩く熊がゐてテレビに映る二0一二年
葉の無くてくきやかに咲く白き花ヒガンバナ科のショウキ
ズイセン
埋もれし玉縄城の来し方を絵に描き残す俳句を添へて