新春の鎌倉(1)
元旦に出むくほど信心深くない私は、成人の日三連休の初日、鎌倉八幡宮に参拝した。その前に北鎌倉駅で下りて円覚寺に寄った。ところどころに蝋梅の花を見かけた。鶴岡八幡宮では、例年のように牡丹苑が開いていた。もう何年になるか毎年入園しているが、花に代わり映えはない。七福神をめぐる老人の群を見かけた。
高杉の梢に鳴けり春の鵙
みつまたの蕾うつむく円覚寺
蝋梅や漱石の鬱映すかに
荒御霊まつる若宮寒牡丹
初春の朝日にねむる鴨の群
七福神めぐりに年をはじめけり
東海道鉄砲宿にあらたまの香の菓(かぐのこのみ)は
光垂れたり
蹲踞して弓矢かまへる初春の姿映せり壁の鏡は
虎頭岩にいつもの鷺を今朝は見ず蝋梅香る舎利殿の庭
白鹿の群あらはれて禅を聴く 瑞鹿山とぞ名づけられたり
竹の節切りて柄杓の手水鉢筧は谷戸の水を流せり
初春の高瀬一誌を訪ひにけり枯もみぢ敷く墓地の参道
漱石の心うつすか蝋梅の花にこもれる金色の艶
あから顔閻魔の前に頭を垂れて来世を想ふうつせみ我は
あらたまの朝日にむかふ鴨の群ふくらむ胸に顔うづめたり
新しき旗上弁財天の旗橋のたもとに並びたちたり