早春賦―相模川―
三が日はとうに過ぎているのに、相模国一之宮である寒川神社には、参拝の人々の自動車の列ができていた。私の興味は、相模川に沿うように伸びて構築されている「さがみ縦貫道」の出来具合であったが、完成までにはまだまだ時間がかかりそうな様子。見上げれば三次元に入り組んだ道路の構造に圧倒される。
晴天下の相模川の河口は、平穏そのもの。鵜、オオバン、鴎たちが餌をとったり、休んだりしていた。
初詣寒川神社に絵馬破魔矢
山茶花や能「石橋」の鬼に散る
いつの間に顔まくなぎの中にあり
初春の駅の屋根裏雛のこゑ
相模川下流へ川鵜飛び行けりキンクロハジロの六羽泳げる
年月を費やしにつつ遅々としてさがみ縦貫道は伸びゆく
初詣車つらなる参道は松樟桜欅の並木
松落葉掃く人のあり朝光(あさかげ)の寒川神社表参道
釣人が捨てて去りにし岸の辺の釣餌つひばむイソヒヨドリは
静かなる河口の水面鵜の鳥の潜きて浮ぶ一分の間
上げ潮に赤き手毬が現れてテトラポッドの波にただよふ
上げ潮となりて毛羽立つ波しぶき河口のカモメ立ちて羽ばたく
突堤にかもめがあまたつらなりて朝の日を浴ぶ上げ潮の刻
ひそやかにわが近づけば遠ざかる朝の川面のオオバンのむれ
こゑあげて人の気配に遠ざかる河口まぶしき朝の水鳥
氷片を詰めたグラスに泡盛の古酒をみたせり 牛(ぎゅう)の
しぐれ煮