防人(さきもり)の歌
古代、北九州(筑紫・壱岐・対馬)防衛のために派遣された兵士で、多く東国から徴集された。3年交替の規定があったが、食料も武器も自前でその間も税は免除される事はなかったので、兵士の家族には大変な負担になった。桓武朝792年になって諸国の軍団を解除、795年には壱岐・対馬を除いて大宰府の防人司も廃止した。以後は現地の人民に防衛をゆだねた。
万葉集の巻13、14、20(ここが主体)に防人歌が百首あまり収録されている。作者名を省略していくつかあげておこう。
父母が頭かき撫で幸くあれていひし言葉ぜ忘れかねつる
防人に発たむ騒きに家の妹が なるべき事を言はず来ぬかも
わが妻はいたく恋ひらし飲む水に影さへ見えて世に忘られず
忘らむて野行き山行きわれ来れどわが父母は忘れせぬかも
防人に行くは誰が夫と問ふ人を見るが羨しさ物思もせず
闇の夜の行き先知らず行くわれを何時来まさむと問ひし子らはも