天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

露草

東俣野町の野辺にて

 ツユクサ科の一年草。古名はつきくさ。月草、着草と表され、花弁の青い色が「着」きやすいことから「着き草」と呼ばれていたという。古くは花が染料として使われた。万葉集などの和歌集では「鴨頭草」「月草」と表記される。他にも蛍草、藍花、青花 、移草、縹草、帽子花 などの呼び名がある。日本全土、東アジアに分布し、平地に群生する。俳句では秋の季語。なお、万葉集には、「つきくさ」を初句にもつ歌が五首ある。


      露草の露のちからの花ひらく     飯田龍太
      露草に出雲神楽のとどろけり     梶山千鶴子


  朝露に咲きすさびたる鴨頭草(つきくさ)の日暮るるなへに
  消ぬべく思ほゆ               万葉集
                        
  月草に衣は摺らむ朝露に濡れての後は移ろひぬとも
                        万葉集
  つゆ草の花を思へばうなぶかし我には見えし其の人おもほゆ
                        長塚 節
  鴨跖草(つゆくさ)に冷やけき雨ふるこのあした夕刊と朝刊と
  濡れてとどきぬ               北原白秋
                          
  ふるさとにわれは旅びと朝露につみて悲しき蛍草のはな
                        古泉千樫
  星くずの瞬きし夜の朝に咲くとりわけ深き露草の紺
                        竹安隆代


  つゆ草の青の移れる指先を子はかなしみて母に見せたり