山百合
日本特産のユリ。北海道と北陸地方を除く近畿地方以北の山地の林縁や草地に分布する。
ユリ科の中で最大級、重みで全体が傾くほど。ユリは世界に約100種、日本でも15種が自生する。姫ゆり、白百合、黒百合、鉄砲百合、鬼百合など。万葉集には十一首詠まれている。美女の笑みを印象したり、[後(ゆり)]をいいかけたり、夏草の茂みに咲く姿を「くさふかゆり」とうたったりする。
道の辺の草深百合の花笑みに笑みしがからに妻といふべしや
万葉集・作者未詳
油火の光に見ゆるわが蘰(かづら)さ百合の花の笑まはしきかも
万葉集・大伴家持
雲雀たつあら野におふる姫ゆりのなににつくともなき心かな
西行
足引きの山のしげみの迷ひ路に人より高き白百合の花
正岡子規
内陣のひだりに右に供花いく種山百合の香のもつともつよし
土岐善麿
強き香にわれを酔はせむたくらみか君がもて来し山百合の花
吉井 勇
痩尾根は岩欠けやすしと戒めて黒百合の花いくつか踏みぬ
植松寿樹
梅雨いまだあけぬ朝の棘(おどろ)より山百合の香ぞ二階にとどく
山田富士郎