天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

彼岸花

円覚寺にて

 東海道鉄砲宿の沿道に赤い彼岸花が咲き始めた。彼岸花の色には、赤、黄、白がある。これらを同時に見られる場所として、北鎌倉の円覚寺がある。意識的に植えられたものかどうか不明だが、白色彼岸花が多く目立つ。松嶺院の墓地の隅には、早くも十月桜が咲いている。


      新政権発つ日黄に咲く彼岸花
      文人の墓地には白き彼岸花
      酔芙蓉空手に先手なしといふ
      洪鐘(おほがね)の肌をすべるやつくつく師
      洪鐘の洞震はせて蝉しぐれ
      流鏑馬の終りし馬場に西日差し
      八幡へ若宮大路彼岸花
      サーフィンの大波崩る晩夏光
      マンションの築二十年曼珠沙華


  夏逝くを墓地に知りたりほのかなる風にふるへる十月桜
  円覚寺文士のねむる墓地にきて今年また会ふ十月桜
  閼伽水をかけたる墓に額づけば谷戸のなだりをくる黒揚羽
  新政権誕生の日の北鎌は白や黄色の彼岸花咲く
  秋来ぬとあせりて鳴くか洪鐘のしづもる森の蝉の数々
  借金を勧むるごとき札立てて男佇む噴水のそば
  校庭に秋の来れば整列す赤き帽子と白き帽子と
  ケータイを見つつし行ける人見れば憎しみ湧き来駅の階段