天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

竜胆(りんどう)

鎌倉・東慶寺にて

 リンドウ科リンドウ属の多年生植物。本州から九州の草原にはえる。高山帯に生育するオヤマリンドウは、やや小形で葉は白粉を帯びる。根は健胃剤になる。昔は、「りうたむ」とも言った。


  竜胆の花とも人を見てしがなかれやははつる
  霜がくれつつ          和泉式部
                      
  谷寒み紅葉すがれし岩が根に色深みたる竜胆の花
                      島木赤彦
  ふるさとの信濃を遠み秋草の竜胆の花は摘むによしなし
                      若山喜志子
  むさし野の低山づたひあゆみきて人こぬ道のりんだうの花
                      鹿児島寿蔵
  りんだうの匂へる山に入りにけり二たびを来む吾ならなくに
                      斉藤茂吉
  三輪山のふもとみちくだるわれひとり枯れくさのなか竜胆青き
                      前川佐美雄
  山に見し咲き遅れたるりんだうの幾日を経てわが夢に咲く
                      来嶋靖生


 北鎌倉「匠」の市は毎年十一月に入ると文化の日の3日まで、円覚寺東慶寺浄智寺などの門前で、台を並べて、陶器、食物、文具、衣服など手作りの工房の作品を売る。円覚寺では、宝物の風入れが行われ、書画骨董の類が展示される。東慶寺の境内には、竜胆がたくさん咲いていた。


      なでしこや二胡の音ひびく東慶寺
      墓古りて供花新しき文化の日
      鵙啼くや携帯電話見つつゆく
      宝物に風通しけり文化の日


  朝光(あさかげ)に青きあかりを点したり苔のさ庭の竜胆の花