天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

長興山の枝垂桜

箱根入生田にて

 今年も見に行ってきた。この時期のわが恒例になっている。小田急線・箱根登山線の入生田駅から歩いて30分ほどのところ。紹太寺にある。樹齢三百二十年以上で樹高約十三メートル、幹回り四、七メートル。ただ、さすがに樹勢が衰えていて、定期的に回復治療を施しているという。神奈川県では随一といってよい桜の名木で、小田原市は天然記念物に指定している。
この長興山という地は、江戸時代に小田原城主となった稲葉正勝が開いた。彼は将軍家光の乳母を努めた春日局の子。紹太寺は、二代目正則が、父母の菩提を弔うために建てた。春日局の墓もある。当時は、広大な領域に塔頭、大門、庭などもあったが、幕末の火災で全焼した。塔頭の清雲院が紹太寺の寺号を継いで現在に到っている。


    桜まで道なかばなり草だんご
    坂くるは老人ばかり朝桜
    夜も昼も三百年の桜かな
    子も孫も枝垂れて咲ける桜かな
    長興山帰るさに買ふさくら餅

    
  銘木の花の遺伝子そのままに枝張りて垂る孫のさくらは
  老木の枝垂れ桜にまねかれて今年もきたり長興山に
  三百年生きて今年も咲きにけり桜支ふる五本の柱