天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ウメ子を悼む

小田原城にて

 小田原城も桜の名所のひとつである。うかつであったが、象のウメ子が亡くなっていることを知った。なんと、昨年の九月十七日の未明に老衰で死んでいるのが発見されたという。昭和二十五年に小田原動物園に来園し、日本最高齢(推定62歳)の象として、有名であった。寂しい限りである。


    残雪にあらはになりぬ大の文字
    早川に沿へる車窓の花あかり
    電車から見上ぐる花と天守
    しやちほこが緑青まとふ夕桜
    生きてあらば象のウメ子も見る桜
    夕桜象のウメ子のすがた無く


  鉄とびら窓のシャッター閉されて象舎の庭に青草の生ふ
  城内の桜ことしも咲きたれど象舎のめぐり人影はなく
  すがた見ぬ象のウメ子の消息を知りてさしぐむインターネット
  完食ののちの熟寢(うまい)のそのままに象のウメ子はあかつき
  を逝く


  朝されば水道水を身に浴びて草食むウメ子まぼろしに立つ
                                 合掌