天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鬼灯

北鎌倉円覚寺にて

 ホオズキは、漢字で酸漿とも書くが、ナス科の多年草。袋の中に赤く熟した実は、種を除いて空にして、吹き鳴らす。といっても昔のことで、現在は田舎でも見かけない。根や果実は鎮咳、利尿などの薬用になる。7月9,10日は浅草観音の鬼灯市。盆頃にはスーパーでも売り出している。


  さにづらふ少女(をとめ)ごころに酸漿の籠(こも)らふほどの
  悲しみを見し            斎藤茂吉
                    
  山畑の萱(かや)藪(やぶ)蔭(かげ)に女ゐて赤き酸漿を剥きに
  けるかも              結城哀草果

  酸漿の実が色づいて来た 時の流れはしづかに早い
                    山崎方代
  ほほづきの色づきそめし草むらを教へてやらむ少女もをらず
                    大西民子
  実を抜きてほほづき鳴らす女子(をみなご)の舌のひらひら昔と
  なりぬ               御供平佶

  鬼灯の袋を鳴らしてする遊び苦甘かりき盂蘭盆のころ
                    河野裕子