青
人類の祖先がまだ海中に棲んでいた原始時代に最初に獲得した色が青であった。そのはるかなる記憶が、我々が空や海の青を見ると懐かしく癒される気持に繋がっているという。ところが、自然界の生物で青の色素をもつものは極めて少ない。青い蝶などは、構造色であり羽の微細構造が光の反射・吸収により青く見えるのであり、青の色素の遺伝子による発光ではない。不可能を意味した「ブルーローズ」は、サントリーの研究所が遺伝子の研究から実現したものであった。
青の顔料は、唯一鉱物のラピスラズリからとれた。その採取技術は、チェンニーノ・チェンニーニという人物が発見した。ラピスラズリの青は、ツタンカーメンのマスクにも使われている。特に絵画では、マドンナブルー、ウルルトラマリンブルー、フェルメールブルーなどと呼ばれて珍重された。なお中国では、青磁の青が別の鉱物から得られた。日本では、植物の藍草から染料の青(ジャパンブルー)が得られた。現代では青のLEDを、日本の小企業が実現したことは、大きな成果であった。これにより記憶密度が各段に高いブルーレイ・ディスクの製品化が可能になった。
以上の内容及び右の画像は、BS-TBS「日曜特番・プラネットカラー人類を翻弄した青」から引用した。
白鳥は哀しからずや空の青海の青にも染まずただよふ
若山牧水
泡を生む前のうしほののび上る波さきにして鋼(はがね)
なす青 田谷 鋭
切に青年たり 明日あらばもみあげと耳のあはひのただ
よへる青 塚本邦雄
水色のスカーフに霧ためながらこころ飢えおりシャガール
の青 馬場あき子
額(ぬか)の痣あをきほむらとなりて燃ゆる怒りの前に一夜
わが坐(ゐ)し 岡野弘彦
透きとほる水をかさねて青となる不思議のごとき牧水愛す
伊藤一彦
億万のいのちを抱き青く澄む地球の色はかなしみのあを
木立 徹