食のうたー調味料(1/2)
塩は、塩化ナトリウムを主な成分とし、海水の乾燥・岩塩の採掘などによって生産される。調味料や保存などの目的で食品に使用される。
わが国の製塩法は、万葉集に「藻塩焼く」「玉藻刈る」などと枕詞になっている。海から海藻を採って天日で乾かし何度も海水を汲み上げては掛けて塩分の濃度を高めて火で焼く作業を「藻塩焼く」といった。なお岩塩は、海底が隆起するなどして海水が陸上に閉じ込められ、あるいは砂漠の塩湖で、水分蒸発により塩分が濃縮し、結晶化したもの。(以上は百科事典から。)
志賀の海女は 藻(め)刈り塩焼き暇(いとま)なみ櫛笥(くしげ)の
小櫛取りも見なくに 万葉集・石川少郎
*「志賀の海女は、藻を刈ったり塩を焼いたりで、ひまが無いので、櫛笥の櫛を手にとって見ることもありません。」
塩の汁(つゆ)けさのいのちのやしなひに南瓜(かぼちや)の黄花(きばな)
とけしづみあり 坪野哲久
卓上に塩の壺まろく照りゐたりわが手は憩ふ塩のかたはら
葛原妙子
吾もすみやかに癒ゆ 幻の汽罐車を停めて火明(ほあか)りに塩甞(な)むる火夫
醤油なく味噌砂糖なく岩塩にて茹でし饂飩に生命をつなぐ
小泉苳三
凛々として食卓塩が光りおり夜の畳に少しこぼれて
子とともに飢をしのぎし岩塩よきのうのごとくわが掌やけくる
山田あき
何か足らぬ何か足らぬといくばくの迷ひに掬ふ一匙の塩
蒔田さくら子
食卓塩ふっているのはひたすら時間をふっているにあらずや
高瀬一誌