新年を迎えて詠んだ俳句や短歌は数多いが、現代では、めでたさを素直に詠んだ作品より、心の翳りを帯びたものが目立つように感じる。
元日の端山にたてる烟かな 久保田万太郎
元日や手を洗ひをる夕ごころ 芥川龍之介
元旦や爺と婆とが子宝湯 後藤綾子
年賀客たれありしやら知るらめや酔さめて眼をあきし夕ぐれ
吉植庄亮
まさ目には何も見えねどあらたまの年の祝詞(ことほぎ)言ひ
居り母は 斎藤 史
何くはぬ顔して坐る元旦の慶も一尾の胎子(はららご)のまへ
安永蕗子
日本の活力を信じてわが一句を。
雲の間に雪かがやける不二の峰
今年もどうぞよろしく。