田畑のうた(3/8)
段々の田を落ちめぐる水のこえ烈しき雨のなかにうたえり
草野比佐男
をつくばの山かきくもり葛飾や苗代小田に小雨ふりきぬ
加藤千蔭
女郎花ふさたをりにと来し君は妹が門田に穂むき見がてら
*本居大平: 伊勢国松坂出身。13歳で本居宣長の門に入り、寛政11年に宣長の養子となる。 宣長の祖述につとめ、宣長の実子・本居春庭の失明後は家督を継いだ。紀州徳川家に仕え、侍講などをつとめた。
田に並べし新藁束も家の妻にこの日かへるになつかしきもの
島木赤彦
吾妹(わぎも)らが足裏よろひに刈(かり)杭(ばね)を踏みわたりつつ植うる
新墾田(あらきだ) 吉植庄亮
*刈杭: 根の付いた木の切り株。
大和路は田圃をひろみ夕あかしいつまでも白き梨の花かも
木下利玄
これの田を植うるにあらし畔の上に早乙女(さをとめ)ならべり十五六人
古泉千樫