結社「円座」と『武藤紀子句集』
俳句結社誌「古志」で題詠欄の選を担当されていた武藤紀子さんが、新結社「円座」を立ちあげられた。四月号が創刊号になっている。そして、ふらんす堂の現代俳句文庫から『武藤紀子句集』が刊行された。これは、これまでの三句集『円座』『朱夏』『百千鳥』の抄録版である。俳句のすばらしさが堪能できる。武藤紀子さんの作品の凛とした風韻を味わえる。ぱらぱらとめくっただけでも
うしろから冬が来てゐる大伽藍
雪の日のとり戻したき文ひとつ
星の中泳ぎの腕のやはらかく
蝶を握ればうすうすと霧匂ふ
月光の吃水線となつてゐし
団栗や雲のとびゆく関ヶ原
緑陰ににはとりの首浮びけり
後手の人ばかり来る雁木かな
春愁をいへり鯨を食べながら
などが眼を惹く。あらためて初めから読むとしよう。
なお、「円座」創刊号の巻頭句は、
富士山の雪の色して志(こころざし)
東日本大震災の復興にも勇気を与えてくれそうではないか!
[注]武藤紀子さんは、宇佐美魚目に師事され、飴山實、長谷川櫂など
の俳人と活動を共にしてこられた。「古志」「晨」の同人。