天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

松の花

江ノ島にて

 松は、晩春、単性花を雌雄同株に開く。雌雄花ともに花被はなく、雌花は球状に集まって新芽の頂につき、雄花序は穂状で新芽の下部に密生する。果実は、多数が集まって球果をなし、松かさと呼ばれる。


     生きてまた松の花粉に身は塗(まみ)る
                     山口誓子
     指弾して指黄に染まる松の花   野瀬潤子


  雪つもる年のしるしにいとどしく千歳の松の花さくぞ見る
                 金葉集・藤原頼道
  松の芽の尖くれなゐにうねる日をいだける生は何を蔽はむ
                     河野愛子
  郭公は十日ほどゐて去りぬらし松の花咲くころ空濁る
                    石川不二子