漢字では、時鳥、子規、杜鵑、郭公、霍公鳥 などを当てる。鶯などの巣に産卵して育てさせる、所謂、托卵で知られる鳥で、和歌では最も多く詠まれたのではなかろうか。万葉集に154首、新古今集に62首に出て来る。鶯よりもはるかに多い。万葉集、古今集、新古今集の三歌集から三首ずつあげておこう。
古に恋ふらむ鳥は霍公鳥けだしや鳴きしわが念(も)へる如
万葉集・額田 王
霍公鳥無かる国にも行きてしかその鳴く声を聞けば苦しも
万葉集・弓削皇子
卯の花の咲く月立ちぬ霍公鳥来鳴き響(とよ)めよ含みたりとも
万葉集・大伴家持
やどりせしはなたちばなも枯れなくになど郭公こゑたえぬらむ
古今集・大江千里
夜やくらき道やまどへる郭公わがやどをしも過ぎがてに鳴く
古今集・紀 友則
夏山になくほととぎす心あらば物おもふわれに声な聞かせそ
古今集・読人しらず
郭公くもゐのよそに過ぎぬなり晴れぬおもひのさみだれの頃
新古今集・後鳥羽院
うちしめり菖蒲(あやめ)ぞかをるほととぎすなくや五月の雨の
ゆふぐれ 新古今集・藤原良経
郭公いつかと待ちしあやめ草今日はいかなるねにかなくべき
新古今集・藤原公任
ほととぎすとあやめの取り合わせは、現代でも実景として見られる。例えば、横須賀菖蒲園。菖蒲が咲き、時鳥がけたたましく鳴く。
[注]右上の「ホトトギス」の画像は、WEBの「ほととぎす の画像検索結果」から借用してトリミング、わが菖蒲の画像と合成した。