天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

無花果(いちじく)

神奈川県開成町にて

 クワ科の落葉小高木。小アジア原産で江戸初期に渡来した。別名、唐柿。


     無花果や手の腹よりもやはらかな    長谷川櫂


  少女子(をとめご)の乳くびに似たる無花果の実のなりそめは
  愛(うつ)くしきかも              岡 麓


  いきどほろしきこの身もつひに黙しつつ入日のなかに無花果
  を食む                   斎藤茂吉


  生きてゐてああよかったと朝露にしっとり濡れし無花果を食む
                        香川 進
  明るき店に無花果をしばし選りぬ帰ればなほ履歴書を書かねば
  ならぬ                   近藤芳美


     無花果の青き実に明日思ひをり
     無花果三蔵法師も食べにけむ


[追伸] 無花果の語源
  ペルシャ語のアンジュルが中国語で映日果(インジクヲ)と書き、
  江戸初期に日本に渡ってきて、イチジクと読むようになった。

     いちじくや広葉にむかふ夕涼    続猿蓑