天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

胡蝶蘭

伊豆熱川にて

 東南アジアに分布するラン科の一属ファレノプシス。この花は、店の新装開店や個展会場への贈り物にされることが多いようだ。


  目覚めたる眼に床の間の胡蝶蘭かならず去来する
  人ひとりあり          頴田島一二郎


  寒き日も胡蝶蘭の花膨らみてながき命を保ちて
  ゐたり              生方たつゑ


  胡蝶蘭うすくれなゐに純白に色ふかく咲くさかり
  のいのち             窪田章一郎


  枕辺に胡蝶蘭のはなときながしつくづくと見て
  よろこぶわれは           宮 柊二


  胡蝶蘭白くかがやきよみがえるやささしさはあれ
  二人長く生く            近藤芳美


  胡蝶蘭の香のこもりたる部屋ぬちに病むとは人と
  とほざかること           雨宮雅子


  胡蝶蘭の向きかへやらむかこの場所にて片側ばかりを
  見てゐるこの花           時本和子