九月折々(1)
台風十二号は紀伊半島に甚大な被害をもたらした。さらに十五号が来て本州を縦断し、わが国にとっては東日本大震災と合せてダブルパンチになった。NHKは四六時中このニュースを流していた。十二号の際の行政の対応は緩慢であった。地震津波よりはるかに正確な予報が出されていたにも関わらず避難誘導に失敗した。アメリカのハリケーン「アイリーン」の場合と比べると分りやすい。オバマ大統領は、夏休みを切り上げて急遽ワシントンに帰り、ニューヨークなどの市民に避難を呼びかけた。二十万人が避難したという。わが国の場合、過去の経験が全く生かされていない。自衛隊の出動要請は、被害が発生してからであり、避難誘導の予防時ではない。
山崩れ、崖崩れの予知は、水量計、地震計、監視カメラなどをもっと広範囲に設置し、遠隔から観測できるシステムを作って、自治体が責任を持って運用したらどうだろう。そして避難誘導にも自衛隊に出動要請をする。ただし避難先の確保が前提。
コスモスの刈り跡乾く吾妻山
道の辺の赤き茸は蹴飛ばされ
みんみんのこゑに耳穴ふさがるる
山門のベンチに涼み句碑を見る
大鐘に籠るやみんみん蝉のこゑ
ゑのころのころころ揺るる鉄路かな
涼風の木蔭にひらく骨董市
今に継ぐ醤油蔵元門前に使はずなりし大釜を置く
台風につき従ひし雲のむれ箱根の山にぶ厚くかかる
台風の去りし名残の高潮がテトラポッドにぶち当たる見ゆ
うさぎのみ残されてをり孔雀、鹿、アナグマもゐし小動物園は
蝉が鳴く長寿の里の二宮に勝負前とふ地名ありけり
浩宮殿下の訪ひし碑の前に曽我兄弟の墓石は立つ
鳥が啼く吾妻山には蝉しぐれ九月に入りていよよはげしき
鮫たちのつひの棲み家の難破船カリブの海の闇に沈める