天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

朝顔

江ノ島にて

 ヒルガオ科の一年草。蔓は左巻。色も品種も多様である。熱帯アジアが原産らしい。日本には平安時代に中国からもたらされた。従って、万葉集に五首出て来る朝顔は、槿(むくげ)とか桔梗だという説がある。
 朝顔の思い出となれば、誰しもが小学校低学年の夏休みの観察絵日記ではなかろうか。よく見て書きなさい、と叱られながらイヤイヤ描いたものである。近年の思い出として、横浜三渓園で展示されていた洗面器を覆うほどの巨大な朝顔の花がある。その後、どこにも見かけないので、夢ではなかったかと疑うばかり。


     朝顔や棚をとかれて漂へる   長谷川櫂
     路地の奥朝顔の瀧かかりけり  大谷弘至


  朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲き
  まさりけれ         万葉集・作者未詳


  おきて見むと思ひし程に枯れにけり露よりけなる
  槿(あさがほ)の花          曾禰好忠


  はかなくて過ぎにしかたを思ふにも今もさこそは
  朝顔の露                西行


  あさ顔の濃き藍の花のひとつより流れて空の色と
  なりぬらし             太田水穂


  朝顔の花咲く垣のこちらより貧の底つく顔見せにけり
                   前川佐美雄
  まだ暗き暁まへをあさがほはしづかに紺の泉を展く
                   小島ゆかり
  存在を紺に絞りてさだめなき世に朝顔の初(うひ)
  のいちりん           蒔田さくら子


  天王星に買つた避暑地のあさがほに夏が来たのを
  報せておかう            荻原裕幸