天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

紅葉狩(6)

衣笠山ほたるの里にて

 横須賀市衣笠山は、桜の名所である。来年には改めて桜狩の中でご紹介するつもりだが、紅葉はいかにと見に行ってきた。桜の黄葉はとっくに終わっていて、立ち並ぶ桜木は丸裸。やはり、クヌギやコナラの黄葉が目立つ。
岡田緑風『三浦繁昌記』(明治四十一年刊)の美文によれば、次のようである。
「・・・試みに絶頂に立ち四方の光景を展望すれば、脚下に起伏する群嶺は波をたたんで蜿蜒相連なり、山尽きて里落栄え、陸止まりて碧海遠く開く。・・・秋は紅葉の四山に錦を織るあり、春は万だの桜の白雲紅霞となって漂うあり、・・・」


 ちなみに衣笠山は全国に八か所もある。うち最も標高が高いのは、兵庫県篠山市のもので、484m。横須賀市衣笠山は、標高134m。この山正しくは、姿が馬の鞍を置いた形ににていることから「鞍掛山」と言うらしい。


     しら露もこぼさぬ萩のうねり哉   はせを

この句の碑が衣笠山公園入口から入った山の中腹に立っている。周辺には萩が植えられている。もともと萩の群生地だったかどうか、そのためにこの句碑が建てられたのかどうか、定かでない。


     きだはしを下りて見返る紅葉かな
     ひさかたの光たふとし竹の春


  見納めと紅葉求めてたもとほるほたるの里や草笛の道
  冬陽さす衣笠山をわがゆけばもみぢ散るなり草笛の道
  あまづたふ冬の朝日は青白み竹の林におごそかに射す
  風なごむ師走の朝の日に照りてクヌギ、コナラの黄葉かがよふ
  きだはしを下りて見返る山の端はくぬぎ、こならの黄葉麗し
  さねさし相模の山の空高く真白き富士は師走かがやく
  たたなはる山のあなたの空高く真白き不二はうつつにあらず
  春はさくら秋はもみぢと求(と)めあるく衣笠山は見れど
  飽かぬかも