天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

炭焼

炭焼窯(横浜市舞岡公園にて)

 木材を焼いて炭を作ること。また、それを業とする人。炭窯は山中に粘土・石・煉瓦などで築き、窯口と煙突を設ける。中に木を入れ、点火して蒸し焼きにする。炭焼に適している木はクヌギ、コナラなどの雑木。炭の種類には、黒炭と白炭がある。黒炭は窯を密閉して終了し、白炭は窯からかき出して、灰をかけて終える。黒炭は火付きがよく、火力があるが火持ちに劣る。逆に火持ちがいいのが白炭。黒炭の代表は茶の湯炭、白炭の代表が備長炭である。冬の季語。


     炭焼に飼はれて犬の煤け貌    西村しげ子
     山見ては風見ては炭焼きにけり  原田照夫
     杉の葉の火もて炭窯点火せり   加藤照枝


  ひとりのみ世にすみがまにくぶる木のたえぬ思ひを
  しる人のなき             元良親王


  煙立つ小野の炭竈われなれや嘆きを積みてしたにもゆらん
                     藤原俊成
  日数ふる雪げにまさる炭竈のけぶりもさびし大原の里
                     式子内親王
  炭がまの烟一すぢ雲に入りて鳥が音もなし湖添の山
                     佐佐木信綱
  炭窯をのぞきて我はあかあかと照り透りたる炭木を見たり
                     斎藤茂吉
  生き死にのなべては山につながれど炭を焼きかつ富みし
  をきかず              宮脇臻之介


  堅炭を一俵買ひて蔵ふとぞああ吾妻はやその果無事
                     宮 柊二