蕪村俳句と比喩―暗喩(隠喩)(5/5)
白(しろ)炭(ずみ)の骨にひびくや後夜(ごや)の鐘(かね)
*白炭の骨とは、作者の身体の比喩。
虎(とら)の尾(お)をふみつつ裾(すそ)にふとん哉
*乱暴者が酔い潰れて寝ているところへ裾からそっと蒲団を掛ける場面。「虎の尾を踏む」と酔っ払いを差す「虎」とを結びつけている。
あたまからふとんかぶればなまこかな
木のはしの坊主(ばうず)のはしやはちたたき
*鉢叩き(半俗の空也念仏僧)を、木の端と人にいわれる坊主のさらに末端に位置する者と戯れた句。
朝霜や剣(つるぎ)を握るつるべ縄
*霜のおりた朝、つるべ縄の手の切れるような冷たさを剣を握ると喩えた。
寒月や剣(つるぎ)をにぎる釣瓶(つるべ)縄(なわ)
水と鳥のむかし語りや雪の友
雪の河豚鮟鱇(あんかう)の上にたたんとす
郭公(ほととぎす)琥珀の玉をならし行(ゆく)
閻王(ゑんわう)の口や牡丹を吐んとす
枕する春の流れやみだれ髪
*枕して寝ている女の髪は、まるで春の流れに枕しているようだ、ということを暗喩で詠んだ。