菜の花
アブラナ科越年草の油菜の花。わが国では古くから油菜が栽培され、種子から菜種油をとった。現在では西洋油菜に取って代わられた。また菜種油をとらなくなったので、菜の花自体の栽培がめっきり少なくなった。以下に、江戸中期の俳人・与謝蕪村と現代の俳人・川崎展宏の作品を5句ずつあげておく。また和歌として、幕末の歌人・太田垣蓮月の一首を紹介する。
菜の花や壬生の隠家誰々ぞ 蕪村
菜の花や和泉河内へ小商
菜の花や油乏しき小家がち
菜の花や月は東に日は西に
なのはなや昼一しきり海の音
菜の花を大きくくるみ膝の上 川崎展宏
菜の花に松傘軽う飛び来る
膝のやうな菜の花の丘人が出て
炊飯器には菜の花がよく似合ふ
菜の花や山嶽稜々むらさきに
うまいして蝶の夢見ん菜の花の枕にかをるはるの山里
太田垣蓮月『海人の狩藻』