天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

猪(いのしし)

箱根大涌谷にて

 簡単に「ゐ」とも言った。豚の祖先といわれる。その肉は古くから食されていた。獣肉を食べることが禁止されていた時代には、食感が鯨肉に似るところから「山鯨」という隠語で呼ばれ、食されていた。この鍋物が「牡丹鍋」である。秋の季語。


     猪のねに行くかたや明の月        去来
     山畑の芋ほるあとに伏す猪(ゐ)かな    其角
     吊るされて地面に近き猪の鼻      森田智子
     いのししのこども三匹いつもいつしよ  小澤 實


  よろづよをよばふ山辺のゐのここそきみがつかふる齢なるべし
                      藤原道綱母
  悪竜(あくりよう)となりて苦み猪(ゐ)となりて啼かずば人の
  生み難きかな              与謝野晶子


  雪山の道おのづからあはれなり猪は猪の道杣は杣の道
                       穂積 忠
  ゐのししの臭ひかこれはごわごわの太い毛深いたけのこを剝く
                      小島ゆかり
  三十九度の日照り浴びつつ隣人とゐのしし除けの柵を打ちゆく
                       藤岡成子


[追伸]余談: MLBがいよいよ最終段階に近づいている。アメリカン・リーグの優勝決定シリーズ(タイガース対ヤンキース)第1戦は、手に汗握るものであった。4対0の9回裏に、イチローの2ラン、イバニエスの2ランが出て延長戦になったのである。深夜のヤンキース・スタジアムは騒然となった。結局、12回で、タイガースが2点を勝ち越して勝利した。ヤンキースの主砲達が不調なことと好調なジータが延長戦で足を痛め退場したことが、今後の決勝戦に大きく影響しそうだ。