鵙
モズ科の鳥。朝鮮半島、中国、日本などで繁殖。日本全国で繁殖するが、北のものは冬に暖地へ渡る。群を作らず、藪に巣を作る。日本の鵙には、夏鳥のアカモズ、チゴモズ、冬鳥のオオモズ、オオカラモズなどがいる。捕えた獲物をとがった枝に刺す習性があるが、これを「モズのはやにえ」という。鵙と鵙の贄は秋の季語。なお、漢字では百舌、百舌鳥などとも表記する。
百舌鳥なくや入日さし込む女松原 凡兆
御空より発止と鵙や菊日和 川端茅舎
青年を呼びつつありき鵙の贄 永田耕衣
てつぺんはかわくかわくと鵙の贄 小檜山繁子
百舌鳥の鳴く秋の朝けに思ひ出でぬ蔵にをさめしなき母の琴
前川佐美雄
この秋のもずの鋭声(とごゑ)もわれはきく命をもてばこゑ
泣きにけり 福田栄一
戦ひに敗れしものは野に死にき百舌の世界の事なりながら
築地正子
赤光りの鵙柿山にただ一つ全身燃えて敗れ来しなり
馬場あき子
みづからの心宥めむ嘘一つ探しあぐねつ 百舌が高鳴く
石川不二子
朝の鵙するどく鳴けばわが舌が口いつぱいに満ちくる怖れ
小島ゆかり