秋風の里山(3)
入社して一年を会社の独身寮で過ごした後、結婚してアパートを借りたところが、横浜市戸塚区舞岡町であった。当時は、現在のような公園はなく、里山そのものであった。それが現在では、市民のボランティアが管理するみごとな里山公園になっている。舞岡公園という。
百舌鳥啼いて富士山黒く聳えたり
鵙啼いて朝の大気を引き裂けり
わが背丈越えてコスモス咲きにけり
セイタカの侵入に泣く花芒
稲架組むを都の人に教へけり
稲架あまた立ちたる谷戸の水車かな
稲雀谷戸の梢に騒がしき
竹添へて茎支へたり鳥兜
指さして声をひそめし鳥兜
アパートのベランダと窓隠さむと懸崖様にあさがほ咲けり
枝先は行きどまりなりさらぬがにΩΩと尺取り虫は
いつよりぞ蝉の声やむ秋雨のあがりし朝にちちろ虫鳴く
溜池を見下す谷戸の梢には嘴ぬぐふ朝の翡翠
鳥兜あそこに咲くと声ひそめ教へてくれし谷戸の里人