鷽(うそ)(1)
アトリ科の鳥。本州中部以北の亜高山帯の針葉樹林に繁殖する。秋から冬にかけて低地へ移り、桜の花芽を好む。口笛に似た鳴き声。囀るときの姿が琴を弾くての動きに見えるところから、琴弾鳥の別名がある。雄は美しく愛らしいが、現在、狩猟は禁じられている。
高山の木(こ)がくりにして鳴く鷽の声の短きを心寂しむ
島木赤彦
鷽ひとつ啼きしばかりとおもひしに春の目ざめは空を
わたりぬ 斎藤茂吉
雨ふかき庭木に啼ける鷽のこゑかすかに澄むは遠ごこちすれ
中村憲吉
うそ鳥がついばみこぼす桜の芽あまたちらばれり根もとの雪に
相馬御風
首あかき鷽といふ鳥山風のふきとよもせば嘴(くち)に
籠(こ)をうつ 尾山篤次郎
うそという名を付けられてから悲鳴に似たる声しか出さず
高瀬一誌
うそが飛ぶ空がしぐれて日が暮れて辻褄合わせて寝る
ほかはなし 佐佐木幸綱