山桜(1)
葉が出ると同時に開花する。江戸末期にソメイヨシノが出て来るまでの桜は、この山桜が主体であった。奈良の吉野山、京都の嵐山は、古くから花見の名所であった。先ず和歌に詠まれた例をあげる。
あしひきの山桜花日並べてかく咲きたらばいた恋ひめやも
万葉集・山部赤人
さざなみや志賀の都はあれにしを昔ながらの山桜かな
千載集・平 忠度
あくがるる心はさても山桜散りなむのちや身にかへるべき
山家集・西行
もろこしの人に見せばや三吉野のよし野の山のやまざくらかな
賀茂真淵
敷島の大和心を人とはば朝日に匂ふ山桜花
本居宣長
大堰河(おほゐがは)かへらぬ水に影見えてことしもさける
山ざくらかな 香川景樹
本居宣長の歌は最も有名。