川のうた(1)
川の語源は、「がはがは」という水の流れる音にあるという。
一首目の筑摩川(千曲川)は信濃川の上流で長野県を流れる部分の名称。全長 214km。
二首目の象(きさ)の小川は、吉野山の青根ヶ峰や水分神社の山あいに水源をもつ川でやがて吉野川に注ぐ。三首目の玉島は、岡山県倉敷市玉島地域にある地区で、古代においては、備中国浅口郡間人郷の一部であったという。接頭語の「玉」は、名詞について美しいものとして褒める。古代の玉島は美しい場所であったことが偲ばれる。
信濃なる筑摩の川の細石(さざれし)も君し踏みてば玉と拾はむ
万葉集・東歌
昔見し象(きさ)の小川を今見ればいよよ清(さや)けくなりにけるかも
万葉集・大伴旅人
玉島のこの川上に家はあれど君をやさしみあらはさずありき
万葉集・作者未詳
ぬばたまの夜のふけゆけば久木生(ひさぎお)ふる清き川原に千鳥しば鳴く
万葉集・山部赤人
妹なろが使ふ川津(かはづ)のささら萩あしと人言(ひとごと)語りよらしも
万葉集・作者未詳
うつせみは数なき身なり山川の清(さや)けき見つつ道を尋ねな
万葉集・大伴家持
思へども人めつつみの高ければかはと見ながらえこそ渡らね
古今集・読人しらず