天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

山桜(2)

東逗子の山林にて

 次に近代短歌から。


  緋縅(ひをどし)の鎧を着けて太刀佩きて見ばやとぞ思ふ
  山ざくら花              落合直文


  うすべにに葉はいちはやく萌えいでて咲かむとすなり山桜花
                     若山牧水
  山ざくら咲きたるところとほり行き心はきよし言ひがてなくに
                     斎藤茂吉
  夕づきて渓間の風の寒けきに吹きあふらるる山ざくら花
                    大悟法利雄
  目さむればいのちありけり露ふふむ朝山ざくら糠にふれゐて
                    五島美代子
  山ざくら白じろ群れて大き山目ざめ見はれる瞳のごとき
                     窪田空穂