高遠(2)
高遠には、文学碑がいくつもある。多くの文人たちが訪れたことを示している。高遠城址に立つ大きな碑(例:河東碧梧桐)は目につくが、町の通りの縁にさりげなく置かれている碑(例:窪田空穂)は、案内図がなければ見つけるのは難しい。有名な俳人、歌人について、いくつかを次にあげておく。
有りがたやいただいてふむはしの霜 松尾芭蕉
西駒は斑雪でし尾を肌脱ぐ雲を 河東碧梧桐
今年植えし若木の桜一葉を残す 河東碧梧桐
花を花に来て花の中に坐り 荻原井泉水
太鼓たたいてさくらちるばかり 種田山頭火
信濃なるいなにはあらず甲斐がねにつもれる雪のとけんほどまで
源重之
花ぐもりいさゝか風のある日なりひる野火もゆる 高遠の山
太田水穂
いにしへの流人の悲話をおもふ眼に時雨すぎゆく高遠のやま
木俣 修
向う谷に陽かげるはやし此山に絵島は生きのこゝろ堪へにし
今井邦子
高遠の町のゆかしも逢はまほしと思へる友の多くすめるに
窪田空穂
伊那は夕焼け高遠は小焼け明日は日和か繭売ろか
北原白秋
それ程にうまきかとひとの問ひたらばなにと答へむこの酒のあじ
若山牧水