天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

姉、妹を詠む(1/7)

 上代語で、同母の姉妹を「いろも」と呼ぶ。「いろ」は接頭語。同母の兄弟は「いろせ」である。

(注)なおこのシリーズにおいても参考画像をWEBから引用している。

 

  豊かなる家のおとろへ世の塩にしみて静かにわが姉老いぬ

                      窪田空穂

  姉よ涙隠したまへよこの夜をばかぎりの母や惑ひたまはむ

                      窪田空穂

  面そらし二人の姉と行きすがひ動悸してをり家を捨てしわれ

                      田谷 鋭

  地平線縫い閉ぢむため針箱に姉がかくしておきし絹針

                      寺山修司

  約束の映画を見ると久しぶりにいもうとと来ぬ昼の舗道を

                      柴生田稔

  あらはなるうなじに流れ雪ふればささやき告ぐる妹の如しと

                      近藤芳美

*同伴の女性のことであろう。「君は妹のようだよ」とささやいたのだ。

 

  妹が日記の間にはさみ持つ手紙を吾はひそみよみにき

                      近藤芳美

*下句は、手紙を隠れて読んだ、という。

 

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