天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

若葉

藤沢市新林公園にて

 草木の芽生えて間もない葉、新葉をさす。芽生えた草は、「萌え草」という。夏の季語。


     不二ひとつうづみ残してわかばかな   蕪村
     ざぶざぶと白壁洗ふわか葉哉      一茶


  物のこゑひびかふ聞けばおほかたの若葉は和(な)ぎて
  ほど経(た)ちにけり        北原白秋


  少年が草笛鳴らす水の辺の若葉をとりて眼帯とせむ
                   大野誠
  黒き幹は君が筆觸(たつち)を思はしめ若葉明るき今日の
  夕ぐれ              小暮政次


  若き葉は光に向ひむらがれり花はみづからの喜びに咲く
                   小暮政次
  坂上の樹につかの間の夕日射し恩寵の若葉ざわめかせい
                   前田 透
  身を刺すは若葉のしづく木莬のこゑいま抱かれなば
  にほひたつべし          藤井常世


  山々は若葉となりて啼く雉の声は太しもわが畑に聞く
                   神田あき子
  木のなかの水ひらく速度うつくしく弟は若葉兄の木は青葉
                   米川千嘉子
  傘さしてほどなく畳む細きあめ梢(うれ)の若葉を発光させつ
                   島田幸典
  やわらかく若葉を濡らし雨の降る幾千年のなかの一日
                   川端 弘