夕陽のうた(10/10 )
夕陽に関わる思い出も人さまざまであろう。三枝昂之の歌のような記憶は、凄まじいが、案外似たような残酷な体験を持つ人もあるのではないか。物理的にも心理的にも。
沖に沈む夕陽のいろに染められし楕円の枇杷がひとつ
浮かべり 川戸れい子
夕日さすたたみの上にあわれなる五つひろがるわが足の指
岡部桂一郎
梯子の男夕日のなかへのぼりゆくくろくきやかに背(せな)を
まろめて 加藤克巳
にわとりを殺めて剥ぎし掌(て)の記憶遠き故郷に夕陽が当たる
三枝昂之
傲慢も虚栄もとおし寂しみは夕日に透くか掌を合わすなり
浜田 到
才(ざえ)なきは狂わず死なず膨みし夕日が山に呑まれゆく見つ
石本隆一
ここよりは変節と知り晒しおくわが内景は映えよ夕陽に
西勝洋一
[注]右上の画像は、「生で見たい世界のうつくしい夕焼け10選」から借用した。
http://blog.compathy.net/2015/01/02/sunset_yf/