天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鯉(1)

NHKテレビ放映の画像から

 コイ科の魚。ユーラシア大陸の温帯部に広く分布する。他の地域では、移植されたものが野生化している。真鯉は食用であり養殖も盛ん。中国料理によく使われる。


  宇治川の早瀬落ち舞ふ猟舟のかづきにちがふ鯉の
  むらまけ            山家集西行


  投げし麩の一つを囲みかたまり寄りおしこりおしもみ
  鯉の上に鯉            佐佐木信綱


  最上川に住む鯉のこと常におもふあぎとふさまも
  はやしづけきか           斎藤茂吉


  緋鯉浮く池のおもてにしろがねの雨いち早く落ちて
  来にけり              古泉千樫


  川辺田(だ)の稲の粉花(こばな)の散りそめて池に入る水
  鯉をやしなふ            中村憲吉


  不意にこころは悲し雪降り入るふるさとの池に真鯉は生きむ
                    宮 柊二
  古き井戸に一匹の鯉棲むと言へど見しことはなしその
  酷(むご)き緋を          真鍋美恵子


  水深く日のさし透るひとところ膚(はだへ)明りて白き鯉行く
                    田谷 鋭