残暑の候(1)
豪雨と旱魃が同じ国内で起きる現象は世界共通であるらしい。わが国でも、例えば秋田県が前代未聞の豪雨なのに山を越えた群馬、埼玉の利根川水系上流にはさっぱり雨が降らず、ダムは水枯れの状態。猛暑の時期は過ぎつつあるが、関東平野の水不足が解消するのは、いつのことか。
呼び出しの声ひび割るる浜の秋
打水の庭に息継ぐ辺津宮
行燈に点る天女と花火かな
街路樹の蔭にバス待つ蝉時雨
引越しの荷を運び出す醉芙蓉
暑き夜の闇ふかくする薪能
遊行寺に薪能見る百日紅
判官と十勇士を覆ふ百日紅
判官の眼洗ひの池あめんぼう
両翼の尖に霧引く戦闘機猛暑の浜に寝ねて見上ぐる
遊弋とふ言葉のままに鴎とぶ浪音高き江ノ島の空
うち寄する潮の波頭は白からず風に吹かれて秋茜とぶ
江ノ島の夜を点りてほのめける路石階の行燈の列
晩酌の酒の肴に合ふと知るムラサキツユクサのおしたし旨し