天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

新春雑詠(1)

かちかち山から富士を望む

 元来無信心の私は、年末年初に有名な神社仏閣に参って願をかけるなどしたことがない。ともかく人混みが苦手なのだ。昨年末は忍野、河口湖、富士サファリパークと遊んだ。忍野で食べた山女と骨酒は美味であった。正月も三日を過ぎてから江ノ島に出かけたのだが、中津宮に参拝する長い人の列があった。


     年暮れて富士の右手に朝日出づ
     楠若葉児玉神社の空に揺れ
     爾靈山高地の石ぞ楠若葉
     あらたまの白馬の群か沖つ波
     小寒の達磨寺に買ふ大だるま


  火のあらばたちまち燃えむ風つよき冬の枯木の
  かちかち山は


  世界には千頭未満王たりしシベリアトラは絶滅危惧種
  母親と離れし子供保護さるる絶滅軽度懸念のコウモリ
  爾靈山高地の石の五つ六つ児玉神社の路傍に置けり
  四日はや釣糸垂らす江ノ島の埠頭にしぶく北風の浪
  あらたまの年をことほぐ沖つ波白馬の群となりて
  駈けくる


  うす雲は西の方より吹かれきて四日の空をたちまち覆ふ
  年末の忍野に買ひし虹鱒の甘露煮を食ぶ小寒の朝