天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

さんざし

鎌倉長谷・収玄寺にて

 漢字では山査子あるいは山櫨子と表記する。中国、モンゴル原産のバラ科の落葉低木で、わが国には享保年間に薬用植物として朝鮮から渡来した。四月に梅に似た白色五弁の花が咲き、九月には球形の実が赤塾する。この実は消化吸収薬や果実酒になる。
 右の画像は、鎌倉長谷の収玄寺で撮ったもの。


  わが父のつとめたりとふこの園に来たりてぞ見る山櫨子の花
                       岡 麓
  枯枝も草も払はず昔より小さくなりぬあはれさんざし
                      土屋文明
  秋冷えて暖めゐたるひとすぢのおもひ山櫨子の実にあると知れ
                      伊藤泓子
  天日のふりそそぎける山査子の木の実ひとつを歯にきりひらく
                      小池 光


 わが定番の散策ルートとして、江ノ電極楽寺成就院、鎌倉五郎神社、長谷寺、光則寺、収玄寺 をたどってきたが、この時期はあまり目立つ草花はなく、万両、ウメモドキ、金柑 などの実に気付くくらいである。


     秋晴や長靴干せる極楽寺
     落葉掻終へたる熊手箒かな
     秋風や主人を待てる手玉石
     神主を待たせつくろふ七五三
     池の面の朝日まぶしき梅擬
     長谷寺の垣根新し松手入
     蜘蛛の巣の破れ繕ふ主かな
     山査子の実が色づけり庭手入


  指先の跡とおぼしき穴あまた手玉石にも袂石(たもといし)にも