天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

柱時計

遊行寺の骨董市にて

 現在の柱時計には、電子式で振り子のないものもあるが、通常は振り子時計を意味した。それはガリレオが発見した振り子の等時性(一定の周期で揺れる性質)を応用した時計である。時計を発明したのはクリスティアーン・ホイヘンスで、1657年頃であった。その基本的な仕組みは、時針を回す動力にぜんまいばねを用い、その動きを一定の時間で動く振り子で制御するもの。正確な電子時計全盛の現代にあっては、懐かしい昔の家具の一つになった。


  電話にて柱時計の鳴りてゐし一人の圏もまた危ふけれ
                    河野愛子
  売りにゆく柱時計がふいに鳴る横抱きにして枯野ゆくとき
                    寺山修司
  民芸館の柱時計が悠然と鳴り違へたり 冬の陽しづか
                   小宮山栄子
  暗がりに柱時計の音を聴く月出るまへの七つのしづく
                    河野裕子
  わが電話母が父へととりつぐ間柱時計の振り子が聞こゆ
                    上村典子