時計
宇宙の誕生とはすなわち時間と空間の誕生であった。全ての生物は、時の移ろいを感じているのではないか。
日時計の発明は、紀元前約2000年頃。水時計や砂時計の発明は、紀元前1400年〜紀元前700年頃。文明発祥地においてである。わが国では、『日本書記』斉明天皇の項に、皇太子(中大兄皇子)が初めて漏刻(水時計)を作り、人民に時を知らせるようにした、との記述がある。この漏刻台の跡が、1981年、奈良県明日香村の水落遺跡で発見された。広い地域に時を知らせるには、漏刻を元に鐘や鼓を打てばよかった。時刻を報じることをつかさどる人を時守といった。なお、現代でも明六つ(午前6時)と暮六つ(午後6時)に梵鐘をつく寺がある。
時守の打ち鳴す鼓数(よ)み見れば時にはなりぬ逢はなくも怪し
万葉集・作者未詳
明日へあるひは過去へ時計のねぢ巻くとわが指に夜の
どくだみ臭ふ 塚本邦雄
売りにゆく柱時計がふいに鳴る横抱きにして枯野ゆくとき
寺山修司
不揃いに時計が鳴れり村中のどこにもわれの姿は見えぬ
平井 弘